ワインの売り方  ワインのある生活をイメージ

25〜6年ほど前に、酒免許を取得することが出来、初めて酒の販売を始めることが出来ました。当時は全種類ではなく、ビール、日本酒を除く、洋酒を中心とした雑種免許でした。それでも初めてのことですから、ある程度取引先にも提案をしていただきながら売場を作り営業を始めました。

それから少しして、イタリア、フランス、スペインなど、ヨーロッパ各国の見本市を中心に、仕入れツアーに同業数社と行きました。当時ワインについて何も知識が無かったのですが、そのツアーではワインを担当するグループに入れてもらいました。初心者ですので、飲み口の良い甘口が美味しいと感じる程度でしたが、その約10日くらいの間に色々と教えていただき、多少ちがいがわかるようになりました。1日に数十種類のワインを試飲するうちに、それぞれ味のちがい、個性のちがいが何となくわかるようになり、選ぶものもすっきりとしたタイプが多くなるようになりました。やはり売りやすさということもあるので、基本は癖の無い、安さも出せるようなものが多くなり、これを30ケース、あれを20ケースと決めていくうちに、合計は数百ケースになってしまいました。それでも日本の着値は1本辺り200円強くらいでしたので、売価でも倍に付けても安さを感じるので売れるだろうと思っていましたが、入荷した時にはかなりの物量があり、どうやって売ろうかと悩みました。

ある日、夜食事をしながらワインの売り方を考えている時にふと考えが浮かびました。気がつくと、左手にはご飯をいつも手にしているのです。これではワインを飲むことなど、まずありません。実際にはワインのある食生活というもの自体がほとんど存在していないのが実態だったのです。身近な人たちにおいても、晩酌をする人は多くても、酔って気持ちよくなることが目的で、基本的な食生活としては同じような家庭がほとんどだったと思います。

そこで、ワインのある食生活とはどんなものかを想像してみました。食べるものは同じでも、ご飯をグラスワインに変えると、食べるスピードが落ちます。するとそこに会話が生まれます。

例えば、ご飯を食べながらハンバーグを食べるのと、ワインを飲みながらのハンバーグでは、味がちがいます。もちろんご飯を食べながらのハンバーグも美味しく、食が進みます。ワインを飲みながらになると、アルコールにはそのハンバーグの香り、味わいにいつもとちがうものを醸し出し、そして食べた後をすっきりとしてくれる効果があります。さらに、誰と一緒に食事をするかを考えます。家族とする、気の会った仲間とする、恋人とする・・・、色々とあります。楽しいなかに、花が飾ってあったらどうでしょう。何かの記念日、誕生日とか。テーブルクロスを引いてみるとか、キャンドルをともしてみるとか、ほんのちょっとした工夫で、いつもの食卓が大きく変化して、豊かになってきます。このようにイメージすることが価値につながり、新しい提案につながっていくのです。


その当時の結果としては、かなりのロスになってしまいました。販売担当者のレベルも、どれを飲んでも同じ、甘いものが美味しい、商品は名前ではなくコードで判別しているというレベルでした。

ワインの先生について色々と知識をはじめとして指導してもらい、飲み比べて経験を重ねるうちに、自分たちの好みがはっきりするようになってきました。赤ワインブームを背景に、赤ワインの、それもコクのあるものに品揃えが偏り、食事をするという観点では、選ぶことが出来ないような状態でも、自信を持って売っているものは売れていました。

ワインだけでも飲むことはありますが、基本的には食事と一緒に飲むものです。一本一本の味、個性のちがいがわかるようになり、実際の食事にどう合うのかという段階になり、イメージも価値も深まってきています。今ではかなりの物量を売るようになりましたが、やはり体験を重ねないと本物にはなりません。


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