設備にも理由がある


私がやっていたお店は、床に御影石を使い、店内BGMは自動演奏のピアノを使っていました。これだけとっても、一般的には高級という評価をされてしまいます。しかし特に高級を意識してやっていたのではないのです。

来店客数が、1日2千人として、年間73万人。これだけの人が店内を歩き回りますと、床もかなり消耗します。目先の設備投資金額だけ考えますと、安いほうが良いと考えますが、商売は短期間で終わるものではありません。1年2年、5年10年という単位で見てみると、床が磨り減って大体4〜5年で張替えが必要なくらい、下地が出てくるところがあります。食品を売っていると、改装するのに休むのもお客様に迷惑をかけるのと、売上的にも、もったいない感が出てきます。お客様が歩くのに問題がなければ、営業しながら養生して、夜間に張替え工事をしたりしてきました。実際にはタイルをはがして張り替えるのではなく、現状のタイルの上に新しいタイルをはるようにしてきました。この方がはがれにくく、結果的には工期も早く、問題もありませんでした。

ある新店を出す時に、これらの経験から、材質を耐久性の高いものにすることにしました。大理石か御影石が候補に上がり、このときに御影石が安く入るということもあり、御影石にしました。大理石のほうが、御影石よりもやわらかくて、床材としては良いという話もありましたが、今では大理石を使われていた企業も、御影石の評価が高くなってきているようにも見えます。高級に見られる御影石ですが、実際には消耗したり、経年変化が少ないということが、本当の採用理由だったのです。

もちろん良いことばかりではありません。デメリットとしては、水などでぬれると滑りやすく、放置することは厳禁です。汚れには強いですが、油など滲みこんでしまうと、取ることはまず出来ません。あと働いている従業員は、靴底の柔らかいものを使っていないと、普通の何倍も疲れてしまいます。これらの関しては、対応をしっかりしていけば問題はそれほど大きくないし、結果としてはメリットのほうが大きいと思います。

自動演奏のピアノも、初めは関西のあるお店においてあるのを感じが良いと思って導入することにしたのですが、やはり生演奏というのは、CDや有線放送とちがい、同じ曲が演奏されていても、あまり飽きることがありません。高級と思われますが、設備のコストとしては、自動演奏のピアノはアップライトタイプで、新品でも70万円前後、中古でも40万円前後です。維持費としては、毎月最低1回は調律が必要です。それに約2万円。10年使ったとしても、驚く金額ではありません。また今の時代、ピアノを習っているということは、特殊なことではありません。子供の習い事で当たり前ですし、それを考えても、ピアノのある生活シーンは、普通といっても良いのではないでしょうか。

意外にお客様のレベルは高く、調律が狂っていると気持ち悪くなると言われる方もあり、いい加減な気持ちや、格好だけでやると、逆効果になってしまいます。店内で働いている従業員からすると、毎日同じように聞いていると、うるさく感じたり、邪魔に感じたりする人も出てきます。ラウドペダルが作動不良になることも多く、習いたてでペダルを使えない人が弾いているような状態でも気づかなかったりと、感性を高める必要があったりもします。喜んでくれるお客様がほとんどです。お客様の感性と同じレベルで発想しなければ、いつまでたっても物を売るというレベルからは進歩できないでしょう。


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