価値の種類

価値の種類は細かくは色々ありますが、ここでは商売という観点からいくつかに整理してみましょう。
一般的に、「安さ」「品質」、「機能」「サービス」が、比較対象の基準として取り上げられる主な項目です。これらのついて考えてみます。


安さ

今のように、普段の生活で不況を感じる世の中では、まず一番気になるのは価格です。マスコミでも安さを強調しているものは一番先に気になります。

安いということは絶対条件であると思います。しかしただ安ければいいというものでもありません。安さは価値に見合っていることがポイントとなります。収入によって、金銭感覚は異なってきます。

例えば、東京の高質スーパーやデパ地下で当たり前に買い物をしているお客様は、近所にある普通のスーパーよりも品質も高く、値段ももちろんそれに合って高くついているものが多いです。それでもそれを当たり前のように美味しそうと思って(さらに安いわねと思って)買い物されています。

同じように買い物をしようと思って、某高質スーパーへ行き、そこでいつも買い物されているセレブのお客様が、その日の夕食用の買い物をするのと同じように買い物をすると、やはり値段が気になります。

同じように見えるものでも、やはり商品の選別をされているものは高く値段がついています。それを隣で当たり前のお客様は、五千円もするお刺身の盛り合わせを当たり前のようにかごに入れています。とても信じられません。でもそのお客様にとっては、「あれ、これが普通じゃないんですか?」くらいの感覚で買われます。他人がどう思っても、その人が良ければよい事であり、他人がそれをとやかく言っても、何にもならない余計なお世話というのが結果です。
価値があるかないかが判断基準であり、単純に値段が安いから安いのではないのです。


「安かろう、悪かろう」もあります。この価値観も、人それぞれちがいます。収入のちがいももちろんですが、悪いものを買ってしまった時の失敗からくる価値観もあります。



質も高ければ高いほど良いものですが、それにはもちろん価格がついて回ります。コストパフォーマンスとして、必要十分であることをクリアしていることが重要です。

本物、高級、こだわり、有機、無農薬など、高品質である項目、価値観は色々ありますが、これらのものを全て常にクリアしていないと商品として認められないのでしょうか。

いいえ、ちがいます。人によって、これでなければという価値観はありますが、全てのものが本物である食生活をどれくらいの人がしているでしょうか。

普通いないと思います。また味覚や感性が、自分の求めているものとちがうものを、一生食べ続けなさいといわれたら、その人は本当に幸せなのでしょうか。多少混じりけ(化学調味料など)があっても、その人が美味しいと思うものを食べることが出来るほうが、その人にとってはよっぽど幸せだと思います。

価値を決めるのは自分自身です。他人から強制されるものではないのです。人の目、価値観を気にしないで、自信を持って美味しいということを声にしてもらいたいと思います。

売る側の立場としても、これは大事なことだと思います。自信を持って商売をしている。はっきりと表明するから、それが良いと思うお客様が来てくれるのです。競合店と同じ品揃え、同じ価値、同じ表現をしていたのでは、お客様は気づいてくれません。

いくら良い商品であっても、それも認めてもらえないのです。誰かが言ってくれないと、不安で言えないというようなスタンスでは負けてしまいます。

商品という点では、身近にある商品、身近で製造されている商品にも注目が必要と思います。
地産地消という言葉がよく使われるようになりましたが、身近にお付き合いをしている小さな生産者が、自分の商品に思いをこめて作られているものはありませんか。

例えばこんにゃく屋さんがあります。そこのご主人は、「こんにゃくというものは、食べた時の粘りがこんな風にあって、煮た時に味がこう滲みて・・・」と、情熱をこめて語ってくれます。

こちらのお店では、ところてんも作られています。このところてんも、天草の産地として有名な地元の天草を使い、昔ながらの手作りで、丁寧に作られています。あまり身近にこのような商品があると、意外にも近所のあの人が作っているからという感覚が強く、普通のどこにでもあるような商品と勘違いしてしまう人が多いように見えます。どこかのグルメ雑誌などが取り上げてくれなければ、良いものとは認められないというような価値観では、本当に価値があるかどうかは判断できません。理屈だけではありません。

ある納豆会社は、親が営んでいた家業の小さな納豆製造を、廃業しようと考えていたところ、どうせやめるなら自分がやると息子が言い出し、建材の設計士から転職されました。最初は、大手より安く売れるように、安い素材を使って作っていましたが全く売れません。

ある日、ある豆腐屋さんのご主人と出会い、「こんな安物を作っていてもだめだ。やる気があるなら、うちの豆を使って作りなさい。そして作っただけ持ってきなさい。」と言われ、そのようにしました。そしてある日、そこの女将さんが、「この納豆は、今まで一つも売れていない。」と言う話をされ、ご主人にそのことを聞いたところ、「では、某百貨店に商談に行って見なさい。」と言われ行ってみると、その担当者は、商品を見ただけで、明日から納品するように言われたそうです。でもただ見ただけで、この決定は普通ではありません。問いただしてみると、「私は半年も前から、毎日この納豆を食べていました。いつ商談に来るかと思っていました。」という返事が来たそうです。

このことから学ぶことは、安ければ売れるというものではない。価値がなければ誰も求めないということがまず一つ。そして、人と人との出会いがあり、それが大きな価値を持っているということです。

人の出会いがあり、そこから信念が生まれ、受け継がれ、良いものは生まれてくる。そしてそれは規模や広範囲の人が知っているかどうかではないということです。小さなものであっても存在できる。そしてそれが経済的にも、関係する人が成り立つことが出来るのであれば、十二分に価値があるのです。他と同じことに価値があるのではなく、自分が良いと思っていること、それが人に喜んでもらえること、必要とされることに価値があるのです。

農産物は、たずさわる人の高齢化が進み、今後の大きな問題です。青果市場に仕入れに行きますと、全国各地から来る荷物以外に、地元の生産者が地元の市場だけに出荷しているもの、また選外品などが競売にかかっています。全国から来る商品は、味、鮮度、規格など揃っており、誰から見ても価値があります。それらにも等級、産地、生産者などによって価値が異なり、需要と供給のバランスから、相場も日々変わります。

地元生産者が地元市場の競売に出す商品は、一見まとまった数量にならず、品質のばらつき、形の悪いものなど様々ありますが、これを売場に並べると、以外にもお客様は一番注目をしています。それは値段が安いからということもありますが、地元の人が作った商品であること、鮮度が抜群に良いことが魅力になっています。

また売り手にとっては、利益率も高く取れる商品であることと、売り手買い手ともにウィンウィンの関係になっています。論理的に見ると、選外品であるので良いものとはいえないはずですが、お客様に支持されて、鮮度も良く回転している商品、そして値段も安く、しかも儲かる。これは見方によって、良い商品といえるのではないでしょうか。

商品にはストーリーがあります。大手メーカーの作る商品にも、開発コンセプトがありますし、小さなメーカーには思い入れがあります。どのような形であれ、考え方のしっかりしていない商品は支持されないし、残れません。まずは直感で良いか悪いかを判断し、後で理由付けをしているはずです。小さな生産者であればあるほど、特殊化、こだわり、集中化など、一点に集中していることが多いです。大手と同じ発想をしなければならないというのは、思い込みに過ぎないと思います。もちろん大手メーカーのしっかりした考え方は参考になります。

商品にストーリーがあり、それがお客様に渡るまでに関わる人たちも、これを共有しています。良い商品は、生まれてくるための想いがあり、その価値観に共感する人が流通に関わり小売へとつながり、お客様に渡っていくという流れがあります。想いまでがリレーされるから、お客様も共感できる。このストーリーは、価値観の数だけ存在しています。

地元の小さなメーカーを大切にする。身近な商品は、普通に思いますが、実際には長い間 慣れ親しんだ味で、品質的にも良いものがあることが多いものです。またこれらの商品を扱うことは、地元の人にとっての信頼であり、また看かたを増やしていく一つの手段でもあります。


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