価値の種類(その2)

機能

機能的に優れていること、色々な機能を持っていることは大切です。今の日本では、機能が色々ついていて、至れり尽くせりというようなものがたくさんあります。またそうでないと存在できないようにも感じます。しかし本当にそれが求められているのでしょうか。

例えば携帯電話。全ての機能を、使い尽くしている人がどれだけいるでしょうか。確かに機能が多いほうが便利です。若い人たちはかなり使いこなしているようにも見えます。しかし実態としては、使い方としては通話、メールが大部分を占め、最近はインターネットでの検索や、中にはホームページを公開したりと、決まった使い方が多いのではないでしょうか。

私も、全ての機能は使い切れていませんし、あるはずの機能を探すのに色々とボタンを押してみたり、人に聞いてみたりと、必要とされていない機能も多くあります。シンプルにらくらくホンを使われる人も増えているようです。でも機能が多いことは、魅力的に見えます。

海外の携帯は非常にシンプルで、それこそ通話機能くらいしかないように感じます。それに較べると、日本の携帯はパソコンと同等の性能、もしくはパーソナルユースとしてはそれ以上の機能、価値を持っています。

クルマも同じことが言えます。車種、グレードによって装備は大きくちがいますが、やはり買うときに、色々と機能が付いていたほうが魅力的です。出来るなら上のグレードで、色々な装備が付いたものにしたいし、パワーも大きいほうがいい。お金があれば、どれだけでも手に入れることが出来ます。

最上級の車種を買ったとします。実際に納車されて、全ての機能を使い切っているでしょうか。クルマの基本性能は走ることです。移動する間に快適であることです。パワステ、オートエアコン、オーディオもブランド品と、確かに価値があります。そして快適です。でも使われずに、あるだけで満足してしまっている装備も多くあるように思います。パワーもどんどん高性能になりますが、実際には、それを使いこなせる場所も、基本的にはサーキットのように限られたところだけになります。一般道では速度制限もありますし、交通量も多く、ルールを無視しなければ無用なものです。ルールを無視すれば事故にもつながるし、使いこなすというレベル、状況からはかけ離れています。でも余裕のパワーはあると、やはりいいものです。

実質的な移動手段と結果としてみると、どの車を使っても、それほぼ時間は変わらないで目的地まで着くのが実態だと思います。どんなに急いでも、走る距離は数十キロから数百キロ。交通量も多く、渋滞もしていたりと、実際には五分前後から、かかっても一時間以内くらいではないでしょうか。気合を入れて走って、仲間より五分早かった。その優越感はその人の価値。でもたった五分。「だから(なに)と言われるとそれだけのこと。実質の価値の差はどれだけのものなのでしょう。でもその優越感にも価値はあるのです。価値観は人それぞれ、様々です。

評価基準も、満足も、その人それぞれ。これでなければというものは決められません。それを決めるのは、その人自身だから。

サービス

サービスというのは、この店、施設において、このようなことをしてくれるのは当たり前というのは、サービスというよりは商品という見方も出来るのではないかと思います。

大阪で、某高級ホテルに業界の仲間で今話題のサービスの勉強をしようと泊まってみました。普段は皆、仕事では一万円台のホテルを利用していると思います。話題の業界ですから、わがままを言って、それに当たり前のように応えてくれるのだろうと思っていました。

でもそこで、ついいつものように、せっかちに過ごしてしまうのも普段の生活から来る価値観です。私は意識して、荷物を持ってもらい部屋に案内してもらいました。一緒にいた仲間は、もってもらえばいいのに、自分で荷物を持って部屋に行きました。その時にベルボーイさんは、特に「お持ちしましょう」という言葉もありませんでした。部屋について、説明しましょうかということに、お願いしますと伝え、説明していただきました。別に特別なこともありません。高級ホテルでなくてもしてくれることです。

部屋はさすがに高いだけ合って、調度品も全て高級なものを使ってありました。色々と見ていきますと、冷蔵庫に入っている品揃えで、ちょっと疑問を感じました。品揃えそのものは何の変哲も無い商品ですが、その値段です。多少高いのは問題と思いませんが、ミネラルウォーターが確か八百円もしました。ごく普通のブランドです。今時こんな普通の商品は、どこのホテルでも自動販売機でそこら辺の自動販売機と同じ値段で売っています。それが驚きの価格。まあこれも価値は色々、利用しなければ関係ないので、こういう価値観もあるのかということにしました。

そして会議をして、その部屋で食事をしました。食事は味も良く、満足できるものでした(値段は別ですが)。食事の最後に中国茶が出て、その茶葉を少し袋に入れたものを記念にもらいました。気持ちはわかる気がしますが、でも返ってそれが少しだったので、私は安っぽく感じてしまいました。

価格とのバランスという点で振り返って見ますと、高い料金を取るので何でもわがままを聞いてくれる用意はあるかもしれませんが、全てその背景にはお金を払っているという裏づけがあるように感じてしまいました。

これはそれぞれの人たちの価値観ではあると思いますが、私はサービスとは、払ったお金以上のもの、お客様が期待しているそれ以上のことを受けたときに価値を感じるものだと思います。それがあらかじめ用意されていたり、ポリシーとして決めていることであったりしても、受けた側が期待以上であれば感動します。そしてそれは、相手のことを思い、どうしたら良かったと思ってくれるか、満足してくれるかという気持ちから感じ取れるものだと思います。形よりもまず、思い、気持ちが肝心であると思います。

私がお店で店長をしているとき、お客様から苦情をもらうことがもちろんありました。その時に私は、時間帯や、お客様が何をどういう目的でお買い求めになられたかを考えました。

例えばそれが夕食のためのお買い物で、夕方夕食の用意をしていたときに見つけた苦情で、もう夕食に間に合わないという時には、もちろんだめなものを提供してしまったということに対しての対応はありますが、お客様の夕食を台無しにしてしまうということを第一に考えました。申し訳なかったということをお伝えし、そしてすぐにお伺いします。その時に、代わりの商品をお持ちし、代金はお返しし、そして用意しようとしていたおかずの代わりになるものをお持ちし、さらにデザートもいかがかと思いお持ちしました。そこまでしなくていいというお客様には、いらないというものは持ち帰りますが、まず一番大切なことは、どうしたらイレギュラーに起きてしまったことをそれが無かったかに感じてもらい、そしてそのあるべき時間を満足していただくかということではないかと思い対応してきました。

ルールで決めたわざとらしい対応ではなく、自分だったらどう思うか、自分だったらどうしてもらいたいかと、人としての思いでやってきました。お客様によっては、ここぞとばかりに無理を言われる方もおられました。しかし出来ないものを言われたら、出来ないというお答えはしました。

自分でされたら嫌なことは、他の人にはしない。自分だったらこうされたいということを意識してやってきました。クレーム対応も、そのことにだけ限定して対処すると、物とお金のやり取りになりがちです。気持ちの無い形の対応からは、下手をすると話がこじれる結果も生まれがちです。信念を持って対応すると、必ず理解してもらえるものだと思います。

お客様の立場から見てのコストパフォーマンスも大切ですが、これらを振り返って、良い関係、良い商品を提供するということで、売り手側の気持ちの大切さもあります。売り手としても、最初から値切られるということを意識してしまうと、やはりそれなりにしたくなるというのも事実だと思います。

ホテルなどで年末の忘年会をする時、幹事さんは出来るだけ安くあげようと工夫をします。宴会が始まると、参加者からは色々と予想以上の注文が出てきたりします。ホテルと交渉をする時に、やはりコストを出来るだけ下げようとすぐに意識してしまいます。この交渉をする時に、ホテルはどういう気持ちになるでしょう。良心的なホテルであれば、お客様に喜んでもらおうと、求められたことは実現しようと努力します。

ここであまり料金の話ばかり出てくると、潜在意識の中では、なんとなく割り切れない気持ちも出てくるのではないでしょうか。喜んでもらおうという気持ちと、せこいなという気持ちと矛盾があり、全力で取組みきれないような気持ちになりかねません。売り手としても、気持ちの良い仕事をするためには、適正な利益はなければなりません。このためにも、商売で売れればいいとか、儲かればいいとかいうだけでは成り立たないということが出来るでしょう。

想いを伝えることができる、それに対して売上と利益がいただける。ここに存在意義があるのです。誰でもいいというわけではないのです。自分の提供している商品、サービスの目的、質と、お客様の求めている質、価値、満足がちがっていると、必ずどちらかにしわ寄せが出てきてしまいます。それはいつか表面に出て、継続は出来ないのが自然なことです。場合によっては、お断りする場面もあるはずです。買わないのに、色々と評価してくれるお客様(?)もおられます。そのご意見の中には、もっともなこともあるので、決して全てを無視することは出来ませんが、それ以上に本当のお客様の声は、積極的にお聞きしなければなりません。売る側にとっても、気持ちの良い仕事の出来る条件は整備したいものです。


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