時間と空間 商品を取り巻く環境 付随する価値

今の時代の本当に求められている価値とは、単純に物ではなく、「時間」と「空間」、その商品を取り巻く環境など、様々な形で、そしてそれは目には見えない、心や人など、トータルとしての存在としての価値が求められていると思います。

物を売る時代、品質と価格だけで判断される時代は終わりました。何を売る時代なのでしょうか。お客様は、結果として商品を買われているかもしれませんが、商品を買うということを通して、トータルとしては「満足」を買われているのだと思います。全ての商品には、「時間」と「空間」という付加価値がなければなりません。

これも具体的にあらわすのは難しいことです。必ず一つのことだけではないからです。その商品を食べるとき、利用するときは、どんなシチュエーションなのか、想像することから始めることが望ましいと思います。イメージした場面を、口に出して表現し、そしてそれを関係者で共有し、実行する。うまく表現できないことであっても、イメージを描き続け、まるでアーティストになったかのように表現する。これが想いなのではないかと思います。


ライフスタイルを提供するハーレーダビッドソンジャパン

ハーレーと言ったら、昔からライダーにとって憧れのバイクです。私も乗っていますが、性能を日本車と較べると、明からに劣ります。パワー、旋回性能、制動力等、どれもかないません。しかしあの堂々とした風格や音など魅力は多く、支持者は多くいます。

今バイク業界は、まさに冬の時代。全盛期には年間三百万台売れていたのが、今は百万台を大きく下回る台数しか売れていません。原付に乗るときに、ヘルメット着用が義務で無かった時代の、便利な日々の足として使われていた時代から、ヘルメット着用が義務になり、どんどん面倒で不便な状況となり、そして今では、駐車禁止で取り締まられてしまう時代。それなのに二輪専用駐車場は、必要なだけ存在しない。バイクを仕事で使わなければならない人も減り、現在ではバイクはほとんど趣味の世界でしかありません。売れているのは大型スクーターとハーレーくらいといってもいいくらいと思います。

風格や音などに魅力のあるハーレーですが、ハーレーが成功しているのは、バイクというものを売っているからではありません。ハーレーは物ではなく、バイクのあるライフスタイルそのものを提供しているから本当の価値を感じるのだと思います。

バイク乗りは、仲間が集まる場や、共にすごす時間、走る場などを求めています。私が学生時代、よく出入りしていたバイク屋がありますが、もともとある程度のライダーが集まる感じはありましたが、私が行き始めた頃から、かなりお客様も増えてきたように思います。別に私がきっかけであったというわけではありませんが、そこに集まる仲間は、新しいお客様が来ると、そのお客様に色々と話しかけて、買いに来たバイクが良いか悪いか、勝手にアドバイスをしたりしながら楽しくやっていました。そしてどんどん仲間が増えていき、そのバイク屋さん自体がかなりの賑わいを出していました。

時期的にもバイクブームでもありましたが、ただ単純にバイクというものを売っていただけなら、あんなに人は集まらなかったでしょう。入れ替わり立ち代り、毎日のように皆やってきました。夏休みなどは、夕方になると集まっていたお客さん同士が、「今日はどこに行く?」と言って、毎晩のように箱根、奥多摩、時には清里の方までジャムを買いに行くなど、楽しくやっていました。


そして私も社会人となり、そのバイク屋さんから足が遠のくようになりました。バイクブームも去り始めたとはいえ、その中心となっていた私を含めて数名が行かなくなってからは客数も下がり、数年後には廃業になってしまいました。それくらいライダーにとって、仲間と共有する「時間」と「空間」というものは重要なものであると思います。

これをメーカーとして全面にだし、ライフスタイルという付加価値を提供しています。この付加価値はハーレーだから出せるものであり、全く同じように他メーカーがやっても、全く同じ結果を出すことは出来ないと思います。独特の世界であり、価値観なのです。もちろん国産メーカーもライフスタイルの提供的なことをしていますが、国産は国産で似たような展開なのではないでしょうか。

国産車を売っている販売店でも、ハーレーと同じような展開は出来ます。そのお店には、そのお店にしかない良さを持っているはずです。私が地元でよく行くお店でも、お客として居心地の良い空間を求めます。それに答えることが出来るかどうかは、経営者によって大きく変わってきます。ただバイクを売るとか修理をするという考え方だけをしていると、お客様は必要なことだけしか求めなくなり、自分たちで仲間を集めて楽しみを共有するようになります。

バイク屋さんというのは、好きでなければ今の時代成り立たないと思います。経営者自信が、お客様と同じ目線で楽しみ、そして商売もするという気持ちにならなければ存在意義はないでしょう。お客様は求めているのです。そして本当にそこのお店に行き続けたいと思うから、お客様が来るように協力もしているのです。これはどの商売でもいえるのではないでしょうか。常連のお客様は、お店の味方であることが多いはずです。利用するお客様の価値から、何を求めているかを積極的に感じ取らなければならないのです。

欲求のレベルは上がっています。自分がこうありたい、こんなことをしたいという想いを描き、それを実現しようと動いたときに、初めて新しい価値が生まれ、多くの人が注目し、お互いにその価値を共有できるようになるのだと思います。

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